白と黒の狭間で
白と黒の狭間に立たされた時、私に割り当てられた色は灰色だった。
白とも黒ともどちらとも寄り付かない中間の色。
何もかもが混ざり合って出てこれなくなったその色。
その色の秘めたものは何なのか、考えても考えても分からない。
でも、その色は白と黒とのバランスの上に成り立っているのは間違いない。
灰色の立場に立った時、白から聞こえてくる音と黒から聞こえてくる音とは全く違っていたが、その2つは美しく溶け合って新たな色を作り出す。
そしてそこに、灰色の私が鼓動を加える。
重なり合った音たちはその空間に広がっていき、湧き上がる感情は楽しさ以外の何ものでも無かった。
広がっていった音たちは名前も知らない誰かの耳に入り、文字では表せない何かを心に刻む。
ふと、白色と黒色の視線が重なる。
そしてうっすらと笑みを浮かべると、また再び同じ波長で音楽が流れ始める。
白と黒の狭間の灰色にもどこからか笑みがこぼれ始め、その一瞬の高ぶりが様々な感情を増幅させて灰色がより増していく。
私は白色になることも、黒色になることもできない。
なぜなら、私は灰色なのだから。
どれだけ黒を足してもそこに白は混ざっているし、私は灰色から抜け出せないままなのだ。
でも、それでいい。
あの楽しさを、あの一瞬の高ぶりを味わえるのであれば、私は灰色でいい。
もし叶うなら、もう一度白と黒とが溶け合ったあの音を聞きたい。
もし叶うなら、もう一度あの音たちに確かな鼓動を加えたい。
もし、叶うなら。
もし、叶うのであれば、私は白と黒の狭間でずっと灰色でありたい。