風前の灯火

 

 

ふうっと風が吹いた。

 

灯る炎は激しく揺れて消えそうになるが、なんとか持ち直したみたいだ。

 

みんなが安堵してその炎を見つめる。

 

誰かが歌を歌い始め、自分以外の人もみんなその歌を歌い始める。僕はどうしていいのかも分からず、ただ立ち尽くす。

 

そして、周りが暗くなる。ただそこに灯った炎だけが赤く輝いている。

 

 

ついに、流れる歌も終わった。

 

 

これまでかと思い、腹を括る。

 

 

そして、精一杯の息を吹きかけてその灯を消す。

 

 

一本だけ僅かに残った炎も、ためらう事なく吹き消す。この炎を消さなければ、私たちは次に進むことができない。

 

 

パパンッ! パパパンッ!!

 

 

真っ暗になった部屋に破裂音が鳴り響き、あたりは一気に明るくなる。

 

 

周りの人は盛大な拍手と眩しい笑顔を自分に向け、クラッカーのツンとした火薬の匂いが鼻を刺激する。

 

 

誕生日おめでと〜う!

 

 

誰かが叫んだ。

 

 

さぁ、楽しい誕生日パーティーの始まりだ!