悪い王様のお話

 

今までは何かしらのいいフレーズとか心にくる言葉のある曲をやってたんだが、今回は単純に私が個人的にめちゃくちゃ好きな曲。

 

 

悪い王様のお話

 

 

ーーーーーー

小さな国の小さな町小さな家に住む

若い娘は運命の恋に落ちたのです

恋のお相手は王様 めでたく見初められ

貧しかった家と別れ家族になりました

ーーーーーー

 

近年稀に見る、物語系の歌。若い娘って誰だ?王様ってどんな人だ??

 

ーーーーーー

ところが2人の子供 可愛い王子はやがて

邪智暴虐の王になり 人々苦しめた

ーーーーーー

 

なるほど、悪い王様とは幸せな2人の間の息子の事だったのか。って、そんなに邪智暴虐で人々を苦しめているのか。

 

ーーーーーー

初めて腕に抱いた日 世界に足りないものなど

1つもなく 何もかもが輝きを増した

世界の全て終わる日も

世界の誰もがあなたの敵になって矢が飛ぶ日も

私が盾になるよ

ーーーーーー

 

サビ。

 

愛情が伝わって来ますよね。

まだ母親には邪智暴虐な王になる未来は見えていないけれど、王子にどんな事があろうが私が見守ってあげるという母の愛が伝わってくる。

 

 

ーーーーーー

王子が16歳になってすぐの事です

戦争が始まって王様は戻らぬ人に

 

帰ると言った約束 信じて待つあなたの背を

抱きしめても振りほどいて1人で泣いてたね

世界の全てを疑い 世界の誰も要らないと

あなたは言う

でもね聞いて 私がここにいるよ

ーーーーーー

 

きっと2番のここが王子にとっての最大の分岐点だったんだと思う。

 

王様が帰らぬ人となってもいつかきっと帰ってくるだろうと信じて待っている。父を失った王子の悲しみが、世界の全てを疑い世界の全て要らないという邪智暴虐な人間へと変えてしまった。

 

そんな彼でも母の愛はずっと向けられている。王様が帰って来なかった悲しみは母のも感じていただろうに。いつかきっと、また心優しい王子に戻ってくれることを願っている。

 

 

 

そして、彼の治める国にある男がやってくる。

 

 

 

ーーーーーー

王様になった王子は 国中涙で染めた

それを止めた男がいた  彼の名前はメロス

ーーーーーー

 

 

そう、メロスが登場する。

ということは、王様はディオニス王だろうか。

 

ディオニス王は原作で人間などは私欲の塊で信じられないと言っている。なるほど、だから「世界の全てを疑い 世界の何も要らない」と言っていた訳か。

 

メロスはセリヌンティウスを人質にして猶予をもらい、様々な困難を乗り越えて約束を果たす。

 

 

ーーーーーー

「自分を守るためだけに生きていくには世界は

大きすぎてバラバラですぐダメになるだろう」

ーーーーーー

 

 

歌詞に鍵括弧が付いているということは、おそらくメロスが約束を果たした際にこの言葉を言ったもしくは王様がメロスをみて思った言葉なのだと思う。

 

自分を守るためだけに生きていくには世界は大きすぎて、バラバラである。だからこそ、人は信頼して生きていかなければならない。

 

困難に追われている中で一瞬セリヌンティウスを裏切って1人だけ逃れようかと思ったメロスから生まれた言葉だが、それに気づいた王様の心の中で何かの変化が起こる。

 

 

 

ーーーーーー

初めて腕に抱いた日 世界に足りないものなど

1つもなく何もかもが輝きを増した

世界の全て終わる日も

世界誰もがあなたの敵になって矢が飛ぶ日も

僕が盾になるよ

ーーーーーー

 

 

そして、最後にもう一度このフレーズが流れる。しかし、これは前のサビのフレーズとは全く意味が違う。

 

 

この曲を聴けば分かるのだが、ただ物語が流れているわけではないのだ。(当時の)メンバー7人のうち女性2人、男性1人がこの曲を歌っていて、語りの部分、サビの母親の部分、そして王様の部分に分かれて歌っている。

 

王様が歌っているのは、「世界の全てを疑い 世界の何も要らない」の部分とメロスの台詞の部分、そして、最後のこのサビ。

 

1回目のサビは母親だけが歌っているのに対して、最後のサビは母親と王様が歌っている。

 

 

つまり、最後のサビは母親の息子を愛する歌詞だけではなく、王様から母親を想う歌詞でもあるのだ。

 

 

帰ると言った約束信じて待つ王子の背を母親が抱きしめても王子は振り払っていた。しかし、メロスに影響されて、振り返って抱きしめ返すようになった王様。

 

だから、王様も

初めて腕に抱いた日 世界に足りないものなど

1つもなく何もかもが輝きを増した

と歌っているのだ。そして、

世界の全て終わる日も

世界誰もがあなたの敵になって矢が飛ぶ日も

僕が盾になるよ

と母親への感謝を胸に刻んでいる。

 

1番の歌詞は「私が盾になるよ」だったのに対し、最後の歌詞は「僕が盾になるよ」になっている。

 

 

こうして、王様の心は元に戻ったことが表されているのだ。

 

 

太宰治走れメロスを作った時に王様の背景をこのように設定しているかは分からないが、こういう物語もとてもいいと思う。ディオニス王とその母親が主人公のお話。

 

 

悪い王様のお話

 

 

 

この歌の物語性とか表現方法が大好きすぎて、時々この曲が無性に聴きたくなる。8分の12拍子ってのも何か中毒を引き起こしているのかもしれない。

 

 

とりあえず、皆さんに1回は聴いてみて欲しい曲である。

 

 

 

 

Goose House / 悪い王様のお話